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 Knowledge of the soil 用土の知識

 アメリカでは1945年から新しい土壌分類を策定する作業が進められ、1960年に「包括的土壌分類体系第7次試案」として公表され、その後の補遺を経て、1974年に「Soil Taxonomy」として公刊されました。
 それまでの土壌分類とは大きく異なり、計測できる土壌の諸性質に基づいた科学的なもので、広く世界の土壌についての分類を目指したものです。
 そしてそれらは11の目(order)に分類されています。

 エンティソル(Entisol) 最近形成された土壌
 インセプティソル(Inceptisol) 溶脱や風化が弱い若い土壌
 モリソル(Mollisol)* ステップやプレーリーの草原土壌
 アルフィソル(Alfisol) 塩基に富む森林土壌
 オキシソル(Oxisol)* 熱帯の酸化物に富む極度に風化した土壌
 アンディソル(Andisol) 黒ぼく土壌
 バーティソル(Vertisol)* 乾・湿の繰返しにより膨張・収縮する暗色粘土土壌
 アリディソル(Aridisol)* 乾燥地域の土壌
 スポドソル(Spodosol) 酸化物や腐植が移動・集積した土壌
 アルティソル(Ultisol) 塩基の欠乏している森林土壌
 ヒストソル(Histosol) 有機質土壌
      *印は日本には存在しないと考えられる目(order)

 またこれらの目(order)の下に53の亜目(suborder)、258の大群(great group)があり、亜群(sub group)は約1000、ファミリー(family)は約4500、土壌統(soil series)は約10500種あるとされています。


 
Proof 証明

 亜種以下の分類は別として、サンセウィエリア現地の目(order)はオキシソル(赤黄色土)という亜熱帯に多く存在する土壌であることがわかりました。
 有機物含量が非常に少ないという土壌ですが、この地帯で育っている植物はやはり地下水が大きく影響しているものと思われます。

 ただ現地の土壌を知ったところでその土壌を日本で使用することもできないので、最初から土壌については真似事で済ますことを考えていました。
 ただphは合わせたほうが良いだろうと以前から思っていましたのでそれはちゃんと測りました。
 日本ではトラノオ(サンセウィエリア)に良いphは6と記載されていますが、やはり私が入手しているサンセウィエリアの故郷の土壌は7を超えていました。
 日本の土壌ではあり得ないphです。
 また、土壌の硬さですが、乾燥していること、細かい砂が多いことなどから、かなり硬くそれで脆いといった感じでした。


 
Soil 用土

 それらを総称し、簡単に真似できる用土として以下をアレンジしてみましたが、乾燥したときの硬さや、水分の保持もかなりそれらしい線ではないかと思っています。
 また頭の重いサンセウィエリアでも決して倒れることはありませんし、カチカチに乾燥し、固まった状態でもしっかり仔株は用土を突き破って出てきます。
 また、1ヶ月以上の悪天候も考慮して、どの鉢でも根腐れしないことを考え、試作を繰り返してこの用土としました。

  矢作砂   2〜4mm   35 %
  日向土 小粒      35 %
  赤玉土(硬質)小粒  20 %
  腐葉土           10 %

 これらを広げて混ぜ合わせたあと、ph調整用として消石灰をそれらの2-3%を加えます。
 この消石灰ですが、化学肥料を以後与える方は多めに、また私のようにミネラルを与える方は少なめ、またはなしでも構いません。
 なぜなら、化学肥料のphは4と酸性であり、ミネラルを与えると言うことはphを上げると言うことだからです。
 また天候不順の時、水分が長く鉢に残ることを想定して、墨を砕いて入れています。
 水腐れ防止のためです。
 墨は1%以下です。

 なお同じように作られる場合は、消石灰は人に害があるというので、苦土石灰でも構いません。
 私は墨を東北の指定農家に特別に作ってもらっていますが、硬くて、砕いた時粉にならなければ他の墨でも、また竹墨でも構いません。

 上記の用土で年間通して問題は発生していませんが、現在いろいろな土壌改良土が出ていますので、それらを使って試行錯誤しながら試しているのが以下の用土です。
 
  矢作砂   2〜4mm   30 %
  日向土 小粒      30 %
  赤玉土(硬質)小粒  15 %
  パーライト        10 %
  ゼオライト          2 %
  富士砂            3 %
  腐葉土           10 %
 


用土はこのようになります

 この用土が良いと思われるのは、植え替えなどで鉢から抜く場合、鉢を逆さにして鉢をたたけば用土共に簡単に抜けます。
 また抜いた根には殆ど用土が付着していませんので、根が全くと言っていいほど痛みません。
 なお鉢底には大き目の軽石か日向土を敷いてください。
 


 Reuse 用土の再利用

 栽培に使った用土はあまり何回も使うと土が悪くなってきます。
 それは、不要な肥料分が蓄積したり、病原菌が繁殖したりしているからです。
 しかし、これを捨てることなく再利用することも可能です。
 その方法は、まず使い終わった用土をよくほぐして、目立つような古い根を捨てます。
 そして、水をたっぷりとかけ、不要な肥料分などを洗います。
 そして湿ったままの土をビニール袋に詰めて密封し、直射光の当たるところに置きます。
 そうすれば、袋の中の温度は太陽の熱で高温になってきます。
 土の中の水分は蒸気になって土の隙間にも行き渡るので、用土全体が高熱で消毒されます。
 この状態で2-3週間放置した後、天日干しして土を乾かし、その後篩いをかけて砂状になった土を除いて、腐葉土1割と石灰2-3%を加えると、新しい用土に再生できます
 病原菌はまず死んでいると考えていいと思います。


 Wood tip 木材チップについて

 タイ(Thailand)の本等を見た方は、用土に木材チップを多量に使っているのをご覧になられたかと思います。
 私も何故木材チップを使用するのか疑問に思い、考察した結果、それはミネラルを補給するためではないかと結論付けました。
 「肥料 ミネラル」のページでも紹介していますが、確かにミネラルは植物が正常に生育するために重要な要素です。
 しかし、それらの木材チップは生のままが多く、木材は微生物により分解され、徐々に腐ってきます。
 そのとき、微生物が周囲の窒素を利用するため、用土が窒素不足になり、生育が阻害されます。
 これを「窒素飢餓」と言い、肥料や堆肥とは逆の作用になります。
 よって、木材チップを使用する場合は窒素の補給が不可欠であり、また過大な窒素の補給は根に障害を与える恐れが大きくなります。


 
Other その他

 用土は園芸店やホームセンターでサンセベリア用とか、多肉植物用として販売されていますが、私的にはすでに書きましたように、あまりお勧めできる用土ではありません。
 理由は「肥料 ミネラル」でも書きますが、用土のバランスが好ましくないと思われるからです。

 容姿や大きさなどを気にしなく、メタボなサンセウィエリアを好む方は売られている用土をお使いください。(冬場の根腐れも心配です)
 しかし、スポーツマンタイプのサンセウィエリアに仕立てたい方は、上記の用土をお勧めします。